04.21.03:34
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08.23.01:22
ゴミ溜め物語⑤
誰かの泣く声がした。
無視した。
今私は夢を見るのに夢中である。
咽び泣く声にほんの少し意識を覚醒させられ、不機嫌になる。
椅子に深く座り直すと、手が触れたところがどろりと溶けた。
毒々しい色をしたそれは、零れ落ちることはなくすぐさま形を取り戻す。
この椅子を拾ってから、幾度となく望まぬ夢を見るようになった。
何度も何度も殺した、大好きな人が苦しむ夢だ。
私はなす術もなく、ただただ興奮するばかりだ。
こんな椅子など捨ててしまいたいと思うときもあるが、
座ることをやめられない。まるで麻薬だ。
確実に毒が私を蝕んでいる。
そのせいか、最近は夢よりも現実を見ることの方が少ない。
「いっそ現実を消してしまおうか」
たった一本のガラス瓶があればそれは実行できるだろう。
「でも、まだやめておこう。夢が見れなくなってしまう」
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