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甘ったれた人間がお菓子を貪りながら入り浸るブログ。前フリもなく色々ネタバレすること多々あり。
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05.21.02:50

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  • 05/21/02:50

09.13.09:48

ゴミ溜め物語⑥


 えらいことになった。

ある日ゴミ溜めでの宝探しから帰ってくると、
部屋の様子がおかしいことに気づいた。
ぐるりと部屋の中を見回すと、嫌でもひとつの椅子が目に入る。
否、椅子だったものが。
私が取り憑かれていた、どろどろで毒々しい色の椅子が、
完全に溶けて床にへばりついていたのだ。
うわ、と小さく悲鳴をあげて、私は後ずさった。
今まではいくら溶けてもまた形を取り戻したのに、
今はもう椅子だった面影は見当たらない。
何かどろどろしていて、気色の悪い色をしたアメーバのようなかたまり。
とにかくなんとかしなくては、と嫌々そのかたまりに近づき、
床に落ちていた鉛筆(本当は椅子の上に置いていたのだが)を持つと
おそるおそる椅子だったものをつんとつついた。
その瞬間恐ろしいほどの勢いで椅子だったものは鉛筆に絡み付き、
あっという間に私の腕をも飲み込んだ。
私はパニックになって腕を懸命に振ったが、ますます絡み付くばかりだ。
椅子だったものは私の腕をつたって、肩へのぼり、ついには右頬にまで
這ってきた。すると突然、声が聞こえた。椅子だったものからだ。

「馬鹿にしている」「それは本当に、謝罪?」「嘘をついている」
「あっちへいけ」「全て台無しだ」「二度と現れるな」
「お気の毒」「お気の毒」「お気の毒」「お気の毒」
「あなたはあなたでいいんですよ?」

声は頭の中に響きわたり、私の脳をゆらした。
もしかしてと思い、私は吐き気を覚えながらも椅子だったものを見る。
針だ。
夥しい量の針が、椅子だったものを覆っていた。
あまりの気持ち悪さに、肌が粟立つ。
胃の中の物がせり上がってきて、私は嘔吐した。
そうしている間にも、椅子だったものは私の体にまとわりつき、
針も私の肌をちくちくと刺した。凄まじい痛みだ。
「そうか」
私はこれの正体を理解した。
「これも愛か。ドチラ様の仕業だな」
このどろどろとした物体は、針穴から流れ出た愛。
いつか幻の針刺しや私の指から流れ出たものと同じものだ。
このアメーバのようなものは、ドチラ様の見当違いな愛と、
この椅子が元々持っていた、麻薬のように歪んだ愛が混ざり合ったものだったのだ。
きっと何人ものドチラ様が針を刺したのだろう。
そうでもないとこんなことにはならない。
泣き声が聞こえた。歪んだ愛からだった。
ただ愛していただけなのに、何故こんなことになってしまったのだろう。
歪んだ愛が、だんだん壊れて声を発さなくなるのと反対に、
ボウカンシャである私は泣きつづけるしかなかった。



++++++++++++++++++++++++++++++++

椅子が椅子のかたちに戻る頃には、私の涙は涸れていた。
倒れた椅子をじっと見る。
もう毒々しい色はしていない。溶けてもいない。
この椅子はもうただの椅子に成り下がった。
麻薬のような愛の中毒性は失われていた。
呪いのようなそれから開放されたはずの私は、ただ呆然としていた。
椅子を持ち上げて立たせる。針は刺さったままだが、もう何も流れ出ない。
そっと腰掛けて目をつぶっても、もう何も感じなかった。
涸れたはずの涙が出た。





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